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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-02-27

中原中也「早春の風」


「在りし日の歌」より






早春の風


  けふ一日ひとひまた金の風
 大きい風には銀の鈴
けふ一日ひとひまた金の風

  女王の冠さながらに
 たくの前には腰を掛け
かびろき窓にむかひます

  そと吹く風は金の風
 大きい風には銀の鈴
けふ一日ひとひまた金の風

  枯草の音のかなしくて
  煙は空に身をすさび
日影たのしく身をなよ

  鳶色の土かほるれば
 物干竿は空に往き
登る坂道なごめども

  靑きをみなあぎとかと
 岡に梢のとげとげし
今日一日ひとひまた金の風……



中原中也 1938 「在りし日の歌」




出典:中原中也全詩集 P.150 1972 角川書店
参照:小学館 全文全訳 古語辞典 2004 小学館 (全文)


注)…すさび = 気の向くままに…する
注)嫋ぶ = ものやわらかに振る舞う
注)鳶色 = とびいろ 茶褐色
注)をみな = 女, 若い女
注)あぎと = あご


改訂:2017.02.27 仮名遣い訂正
2020.06.17 レイアウト更新 文字種訂正 青→靑 他



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