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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-02-17

「早春賦」白鳥英美子さん


この歌と「浜辺の歌」は、いわゆる唱歌と呼ばれるものの中で、大変好きな曲の双璧です。

この早春賦は、歌詞がまだ寒いと歌っていても、そのメロディーが不思議に暖かく、のびのびとした春を感じさせます。

それに加えて、韻を踏んだ文語体の詩が、切れ味鋭く、冬から春に変わる自然と人の気配を描いてくれます。

そして・・・

「聞けばかるる胸の思いを、いかにせよとのこの頃か」

春の訪れに早く安堵したいのに、思わせぶりな自然の移り変わりに惑わされてしまう、そんな、人の心情を、みごとに詠っています。

このあたりが、詩歌、特に定型詩の、醍醐味であるように思います。

この歌、ゆったりとした波に揺られるような、メロディーの心地よさが魅力ですが、それを、敢えて、歌詞の語幹を際立たせて歌い、もう一つの魅力である見事な "詩" が、メロディーに流され埋もれてしまわないよう… そんな歌い方をしている方がいます。

白鳥英美子さんの、早春賦。


早春賦

 
春は名のみの 風の寒さや
谷のうぐいす 歌は思えど
時にあらずと 声も立てず
時にあらずと 声も立てず

け去りあしつのぐむ
さては時ぞと 思うあやにく
今日も昨日も 雪の空
今日も昨日も 雪の空

春と聞かねば 知らでありしを
聞けばかるる 胸の思いを
いかにせよとの この頃か
いかにせよとの この頃か
 
 
  
吉丸 一昌 1912 「新作唱歌」
  

 
注)角ぐむ = 新芽が角のように出始める
注)あやにく = 折悪しく あいにく  
 


「早春賦」
作詩:吉丸 一昌 作曲: 中田 章
歌:白鳥 英美子

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