
歌を聞けば、歌詞にある文学性が歌唱に表現されているかどうか、それが気になってしかたがない筆者にとって大変好ましい歌唱でもあります。
この歌と「浜辺の歌」は、いわゆる唱歌と呼ばれるものの中で、大変好きな曲の双璧です。
この早春賦は、歌詞がまだ寒いと歌っていても、そのメロディーが不思議に暖かく、うきうきとした春を感じさせます。それに加えて、韻を踏んだ文語体の詩が、切れ味鋭く、季節が冬から春に変わる頃の自然と人の微妙な気配を味わい深く描いています。
そして・・・
「聞けば急かるる胸の思いを、いかにせよとのこの頃か」
春の訪れに早く安堵したいのに、思わせぶりな自然の移り変わりに惑わされてしまう、そんな、人の心情をみごとに詠っています。
このあたりが、詩歌、特に定型詩の、そして文語体の醍醐味であるように思います。
早春賦
春は名のみの 風の寒さや
谷の鶯 歌は思えど
時にあらずと 声も立てず
時にあらずと 声も立てず
氷解け去り 葦は角ぐむ
さては時ぞと 思うあやにく
今日も昨日も 雪の空
今日も昨日も 雪の空
春と聞かねば 知らでありしを
聞けば急かるる 胸の思いを
いかにせよとの この頃か
いかにせよとの この頃か
谷の鶯 歌は思えど
時にあらずと 声も立てず
時にあらずと 声も立てず
氷解け去り 葦は角ぐむ
さては時ぞと 思うあやにく
今日も昨日も 雪の空
今日も昨日も 雪の空
春と聞かねば 知らでありしを
聞けば急かるる 胸の思いを
いかにせよとの この頃か
いかにせよとの この頃か
吉丸 一昌 1912 「新作唱歌」
注)角ぐむ = 新芽が角のように出始める
注)あやにく = 折悪しく あいにく 生憎
注)あやにく = 折悪しく あいにく 生憎
∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥
Bravo !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
3'24"
"早春賦"
作詩:吉丸 一昌
作曲: 中田 章
歌:白鳥 英美子
作詩:吉丸 一昌
作曲: 中田 章
歌:白鳥 英美子
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改訂:2025.02.06 動画リンク先更新
いかにせよとのこの頃か、というところが、ぼんやり聴いていたら、意味不明でした。
返信削除どうしろって言うの??? どういう意味?
春が来たよ、なんて聞いたら、そわそわしてしょうがない、どうすりゃいいのさ?
この唄の意味を、子どもたちに伝えたいですね。
信州では、この唄が、心に響きます。
コメントいただきましてありがとうございます、光栄です。
削除「どうしろって言うの???」… これは正に現代語への適訳ですね。
そしてそれが 「…この頃か」と続くところに、期待を裏切って戻ってきた寒さへのちょっと残念な気持ちが込められていますね。
寒さ厳しく自然豊かな信州にあっては年毎に繰り返される如実な生活感情であることと存じます。
先週当地に開花した桜にも、戻ってきた ”記録的寒さ” が襲い、今や花々は瀕死のように見受けます。これはもう "いかにせよ" との問いを通り越して悲鳴をあげているレベル、今年のサクランボの結実は望むべくもないのでは…
創造主の気まぐれも度が過ぎますね。
コメントいただけると浅薄な記事の中身が倍にも膨らみます。
これからもよろしくお願いします。