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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-02-11

中原中也「雪の賦」


「在りし日の歌」より



雪の賦



雪が降るとこのわたくしには、人生が、
かなしくもうつくしいものに――
憂愁にみちたものに、思へるのであつた。

その雪は、中世の、暗いお城の塀にも降り、
大高源吾の頃にも降つた……

幾多々々の孤児の手は、
そのためにかじかんで、
都會の夕べはそのために十分悲しくあつたのだ。

ロシアの田舎の別荘の、
矢來の彼方に見る雪は、
うんざりする程永遠で、

雪の降る日は高貴の夫人も、
ちつとは愚痴でもあろうと思はれ……

雪が降るとこのわたくしには、人生が
かなしくもうつくしいものに――
憂愁にみちたものに、思へるのであつた


中原中也 1938 在りし日の歌



出典:中原中也全詩集 P.230 1972 角川書店

注)賦 = ふ 比喩などを用いず感じたことをありのままに詠む叙述法 (2/11補遺)
注)大高源吾:おおたかげんご 赤穂浪士 俳諧の造詣深く 号は 子葉
注)矢来 = やらい 木・竹などを組んだ垣


改訂:2018.07.09 レイアウト更新 :原典に合わせ 本文ルビ削除 旧仮名遣い/旧字体に変更 原典頁誤記訂正



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