
盲目の秋
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風が立ち、浪が騒ぎ、
無限の前に腕を振る。
その間、小さな紅の花が見えはするが、
それもやがては潰れてしまふ。
もう永遠に歸らないことを思つて
酷薄な嘆息するのも幾たびであらう……
私の靑春はもはや堅い血管となり、
その中を曼珠沙華と夕陽とがゆきすぎる。
それはしづかで、きらびやかで、なみなみと湛え、
去りゆく女が最後にくれる笑ひのやうに、
嚴かで、ゆたかで、それでゐて佗しく
異様で、溫かで、きらめいて胸に殘る……
ああ、胸に殘る……
風が立ち、浪が騒ぎ、
無限のまへに腕を振る。
無限の前に腕を振る。
その間、小さな紅の花が見えはするが、
それもやがては潰れてしまふ。
もう永遠に歸らないことを思つて
酷薄な嘆息するのも幾たびであらう……
私の靑春はもはや堅い血管となり、
その中を曼珠沙華と夕陽とがゆきすぎる。
それはしづかで、きらびやかで、なみなみと湛え、
去りゆく女が最後にくれる笑ひのやうに、
嚴かで、ゆたかで、それでゐて佗しく
異様で、溫かで、きらめいて胸に殘る……
ああ、胸に殘る……
風が立ち、浪が騒ぎ、
無限のまへに腕を振る。
中原中也 1934 「山羊の歌」
出典:中原中也全詩集 P.58 1972 角川書店
注)酷薄 = むごく思いやりのないこと・さま(大辞林)
注)湛え = たたえ(水・液体を)
注)笑ひ = ゑまひ えまい ほほえみ(岩波古語辞典)
注)佗しく = わびしく
注)酷薄 = むごく思いやりのないこと・さま(大辞林)
注)湛え = たたえ(水・液体を)
注)笑ひ = ゑまひ えまい ほほえみ(岩波古語辞典)
注)佗しく = わびしく
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