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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-11-24

魔笛 夜の女王のアリア "Der Hölle Rache"


W.A.モーツアルトの歌劇「魔笛」の第2幕、夜の女王が歌う2曲目のアリア
「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」。



ソプラノは、ルチア・ポップさん。
スロヴァキア出身、1960年代~1990年代、ドイツオペラとリートの分野で活躍。

この歌唱、この声、もう最高! 感激!
ルチア・ポップさんの歌は、今まで、シューベルトのリートでしか聴いたことがなく、それとはまったく印象が違ってびっくりしました。
中低音域の声に、これはリートでもそうですが、しっかりとした "人間的な声" の響きがあるので歌詞も聞きやすく、歌の内容がすなおに伝わってきます。

そして、聴かせどころのスタッカートは、発声の技術や声の質などの難しいことは判らないのですが、最高音域の声が、硬く金属的になることなく、なお人間的で美しく、暖かさと艶っぽさがある声で、これぞコロラトゥーラ、と思わせます。
そして、その歌い方が、最高音域でも余裕たっぷりとみえ、前後のテンポをキープして伴奏に合わせるのを楽しんでいるかのようで、難しさなどまったく感じさせません。
伴奏のフルートの音がかぶさるところでは、あたかもシンクロしているかのように歌声とフルートがピッタリ重なって、聴いて快感、実に心地よい。

このアリアは、そのスタッカートの難易度にばかり注目が集まっているせいか、最高音域の声を出せることだけが取り得のような歌手の歌が公開されたりしてもいて、機会があって聞くことがあっても、私の経験した範囲では、歌として楽しめることは少なかったように思います。
難しい技術を必要とするといわれているスタッカートであるせいか、ここを、あたかも危険な個所を駆け足で通り抜けるかのように、速いテンポで歌う歌手が多く、それにがっかりすると、もう音楽として楽しめなくなってしまいます。

このアリア、実は、以前聴いた悪い印象からか、かなりはっきり、好きではなく、聴きたいと思ったことは一度もありませんでした。それで、昨日まで、ルチア・ポップさんのこのすばらし歌を聞き逃していたことが悔やまれます。
ところが、昨日、ダビデについてのブログ記事の続編を書いていて、突然この歌を聞きたくなりました。
というのは、文章を書き進めると次第に腹が立ってきて、書く言葉が激しく荒くなり、消しては書き直しているうちにやりきれない思いがして、なにか憂さ晴らしがしたくなった…… というのが、そのお粗末なきっかけです。
それで、好きな歌ではないが、心の底の怒りと憎しみを思いっきり吐き出して叩きつけるような、怒り心頭で奇声を発するような、この歌を思い出して聴いてみたくなり… Youtube で探してこれを見つけました。

しかし、こうみごとに歌ってもらって、この歌大好きになってしまいました。
指揮者のオットー・クレンペラー、懐かしい名前です、彼もこれならさぞ指揮者みょうりに尽きると思ったのでは……。


注)現在、Youtube 上には、Maria Callas の名前と画像を使って、いかにもマリア・カラスがこのアリアを歌っているかのような投稿が、投稿者名を変えて複数個載っていますが、それらの音声(歌)は、いずれもここに埋め込んだ Lucia Popp 1969 年の録音とイコールのものです。
これらの偽の投稿は、内容説明の文章に Lucia Popp 1969 年の録音の歌と明記していもいて、その意図は不明ですが、両歌手の名誉棄損に当たると思われるのに今のところ放置されています。
なお、マリア・カラスはドイツ・オペラはほとんど歌っていません。20才台にワグナーのオペラを2つ、それぞれイタリア語で歌った録音が残っているだけだと言われています。
従って、マリア・カラスが「夜の女王のアリア」をドイツ語で歌うなどということは考えられず、偽投稿のようなことは、どのような機会にも、なかったろうと思われます。
 

∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴


"Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen"
 私の心に地獄の復讐が煮えくり返る


Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen,
私の心に地獄の復讐が煮えくり返る、

Tod und Verzweiflung
死と絶望

Tod und Verzweiflung flammet um mich her!
死と絶望が私の周りで燃え上がる!

Fühlt nicht durch dich Sarastro Todesschmerzen,
もし、ザラストロが、お前によって、死の苦しみを味わわないなら、

Sarastro Todesschmerzen
ザラストロの死の苦しみ

So bist du meine Tochter nimmermehr.
もはや、お前は私の娘ではない。

so bist du mine, meine Tochter nimmermehr.
もはや、お前は私の、私の娘ではない。

Aaaaah...............

meine Tochter nimmermehr
もはや、私の娘ではない

Aaaaah...............

So bist du meine Tochter nimmermehr.
もはや、お前は私の娘ではない。



Verstossen sei auf ewig,
永遠に突き放され、

Verlassen sei auf ewig,
永遠に見捨てられ、

Zertrümmert sei'n auf ewig,
永遠に打ち砕かれるのだ、

Alle Bande der Natur.
すべての自然の絆が。

Verstossen, verlassen, und zertrümmert
突き放され、見捨てられ、打ち砕かれるのだ、

alle Bende der Natur
すべての自然の絆が。

alle Ban---------------de,
すべての絆-------------が

Aaaaah...............

alle Bande der Natur,
すべての自然の絆が。

Wenn nicht durch dich!
お前によって

Sarastro wirderblassen!
ザラストロの血の気が失せないなら!

Hört, Hört, Hört ---------- Rachegötter,
聞け、聞け、聞け ---------- 復讐の神よ、

hört der Mutter Schwur!
聞け 母の誓いを!



        Emanuel Schikaneder,1791,aus "Die Zauberflöte: 土のちり (Uriah) 訳


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    Brava !!!!!!!!!!!!!!!!!

 3'28"

"Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen" aus "Die Zauberflöte K620"
Lyrics: Emanuel Schikaneder
Comp: Wolfgang Amadeus Mozart
Sop: Lucia Popp
Cond: Otto Klemperer
Orch: Philharmonia Orchestra
Recorded: 1969


注)記事タイトルには広く知られている曲名を使用しました。
  歌詞対訳は直訳に近い独自訳とし、その対訳の一行目を曲名としました。
  したがって、記事タイトルと対訳曲名とは一致していませんが、同じ曲を指しています。


改訂:2017.11.25 記事タイトル変更
   2017.11.25 ビデオクリップ埋込ファイル変更 他末梢表現変更
   2017.11.30 誤記訂正 聞いて→聴いて 他末梢表現変更
   2018.01.10 ビデオクリップ リンク切れにつき 同じ歌唱の他のアップロード作品に変更
   2018.07.23 レイアウト更新 末梢表現変更
   2020.04.14 レイアウト細部変更


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