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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-11-30

ステファヌ・マラルメ「嗟嘆」


「詩と散文」より




といき


静かなるわがいもと、君見れば、おもひすゞろぐ。
朽葉色くちばいろ 晩 おそあきの夢深き君がひたひに、
天人てんにんひとみ空色の君がまなこに、
憧るゝわが胸は、 苔古 こけ ふ  りし 花 苑 はなぞのの奥、
淡 白 あはじろ 吹 上 ふきあげの水のごと、空へ走りぬ。
その空は 時雨月しぐれづき、清らなる色に曇りて、
 時 節 をりふしのきはみなき 鬱 憂 うついうは池にうつろひ
 落 葉 らくよう 薄黄 うすぎなる 憂 悶 わづらひを風の散らせば、
いざよひの池水に、いとやきあやは亂れて、
ながながし 梔 子 くちなしの光さす入日たゆたふ。


マラルメ ——「詩集」


Stéphane Mallarmé 1893 "Soupir" dans "Vers et Prose"(詩と散文)
上田 敏 訳 1905「海潮音」本郷書院



出典:海潮音 日本近代文学大系 52 明治大正譯詩集 1971 角川書店
参照:岩波 古語辞典 補訂版 1990 岩波書店

注)わが妹 = 私の慕わしい人(俗解)
注)すずろぐ = そわそわ 落ち着かない(大系)
注)朽葉色に 晩秋の… = Un automne jonché de taches de rousseur→そばかす散る 秋の…(土のちり)
注)天人 = 天使(大系)
注)吹上 = 噴水(大系)
注)時雨月 = 陰暦10月の異称(大系)
注)時節の = 自然の移り変わりなど その時々の(辞典)
注)きはみなき = 限り 果て …のない(辞典)
注)いざよひの = ためらいの たゆたいの(辞典)
注)綾 = 模様(辞典)
注)ながながし = 長い(辞典)
注)梔子の = 赤い色(辞典)
注)たゆたう = 定まらず 揺れ動く(辞典)
注)出典は全漢字にルビあり


改訂:2018.06.23 注釈表記変更 レイアウト更新
2020.07.06 末梢レイアウト変更 他


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