
「未刊詩篇」より
疲れやつれた美しい顔
疲れやつれた美しい顔よ、
私はおまへを愛す。
さうあるべきがよかつたかも知れない多くの元気な顔たちの中に、
私は容易におまへを見付ける。
それはもう、疲れしぼみ、
悔とさびしい微笑としか持つてはをらぬけれど、
それは此の世の親しみのかずかずが、
縺れ合ひ、香となつて籠る壺なんだ。
そこに此の世の喜びの話や悲しみの話は、
彼のためには大きすぎる声で語られ、
彼の瞳はうるみ、
語り手は去つてゆく。
彼が残るのは、十分諦めてだ。
だが諦めとは思はないでだ。
その時だ、その壺が花を開く、
その花は、夜の部屋にみる、三色菫だ。
中原中也 1907-1937 未刊詩篇
出典:中原中也全詩集 P.524 1972 角川書店
改訂:2020.07.02 レイアウト更新 出典明記 他
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