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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2016-07-13

ベートーヴェン "エリーゼのために"


子供の頃、隣家のいとこ、4 つ年下の M 君、と仲が良くて、そのころ私がよく聞いていたショパンのワルツのレコードを一緒に聞いたりしたこともあった。



そのレコードはフィリップ・アントルモン氏の演奏であったが、最初にそれを聴いた時、曲が始まると直ぐ、彼いわく「このピアノの音おかしいよ・・・!」。
それは尤もで、低音弦だけが強調されて音が長く伸びて聞こえる欠点のある録音だった。
ピアノが好きで練習に励んでいた彼としては、それがなんとも気持ちが悪かったのだろうと思う。
それ以外の問題はなかったので繰り返し、曲によっては擦り切れるのではないかと思うほど聴いた。

そのいとこが、ある時から「エリーゼのために」の練習を始めた。
最初からかなりすらすら弾いていたように思うが、馴れると更に早くなった。
いつもは、彼のピアノの音が聞こえてきても特に思うことはないのだが、この時ばかりは気になって仕方がない。
ある時、ピアノのある部屋の窓越しに顔を合わせた際に、とうとう訊いた。
「なんであんなに早く弾くの?もうちょっとゆっくりは・・・」
ピアノに触ったこともない者にそう言われて面白くもなかったろうし、練習のためわざと早く弾いたのかもしれないが、特に返事もなく、その後も変わることなく弾いて、更に上達した。

昨夜、だいぶ前に聴いてあまりよい印象を持たなかったルイサダ氏のショパンのワルツを、もう一度聴いてみたくなり、YouTube で第一番のワルツを見つけてクリック。
ところが “この曲は利用できません” と表示され、代って勝手に再生が始まったのが、「エリーゼのために」。ルイサダ氏の演奏と書いてはある。

何だこんなもの・・・、と思ったのもつかの間。

すぐに引き込まれた。
ベートーヴェンの音だ。

ルイサダ氏らしい奔放なテンポで、フレーズが生きいきしていて、エリーゼ(テレーゼ)ってどんな人だったろうと思わせる。
14番のソナタを聴いているのと錯覚するようなところもあった。

以前は、聴き慣れた曲をルイサダ流に変形されて受け入れられないことが多かったが、これは例外。
またひとつ、宝物を見つけた。

* 鑑賞用:ジャン・マルク・ルイサダの「エリーゼのために」

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2018年7月21日追記:
当初埋め込んだルイサダ氏演奏の動画が Youtube で削除されてしまったため、差し替えを探しました。
そして見つけたのが、懐かしい、珍しい、フィリップ・アントルモン氏の録音と、アリシア・デ・ラローチャさんの録音、その二つが一つの動画になってアップされているもの。

前半の、アントルモン氏、いかにもフランス的というかショパン風な演奏と感じました。
後半の、デ・ラローチャさん、スペインを代表するピアニストとは聞いていますが、どのような演奏をする人かはよく知りません。。しかし、その演奏は、ちょっと変わった楽しめるものでした。
あれ? と思う音もあったりしますが、ダイナミックレンジを広く使って、音楽教室の優等生のそれではなく、この曲を書いたベートーヴェンに想いを馳せて弾いているように思います。

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ベートーヴェン作曲「エリーゼのために」
Beethoven: Bagatelle in A Minor, WoO 59 "Für Elise"
Pf: Shirley Kirsten
On her Yamaha P-115 Digital Piano


改訂:2018.07.21 埋込元の動画が削除されたため別の動画に変更 レイアウト更新 末梢表現変更
2018.07.28 埋込動画を Shirley Kirsten さんの演奏に変更
2018.08.11 誤植訂正 Kirste→Kirsten さん
2023.12.27 タイトル変更



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