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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2018-12-11

ハインリッヒ・ハイネ「何ゆゑに落つる淚ぞ」


詩集「歌の本」より



何ゆゑに落つる淚ぞ


なにゆゑに落つる淚ぞ?
涙ゆゑわが眼は曇る。
こはまこと舊きなみだ、
わが眼の底にいと永く留まりしなみだ。

この淚かずかずの姉妹らを持ちたれど、
姉妹らは早やすでに散りゆきぬ、
愁ひゆゑ、はた悦びゆゑに
流れ落ち、闇と風とに散りうせぬ。

悦びを、はた悲しみを、われに與へし
かずかずの青き瞳の星々も
霧のごとくに
消え散りぬ。

さて我が恋の思ひすら
風のごと、虚しく消えつ。
永く殘りてとどまりし、寂しきなみだ
今は流れよ!




Heinrich Heine 1827 Was will die einsame Träne aus Buch der Lieder
ハインリッヒ・ハイネ「何ゆゑに落つる淚ぞ」歌の本 より:片山敏彦 訳



出典:新譯 ハイネ詩集 片山敏彦 訳 1938 新潮社


注)舊き=ふるき 古い
注)與へし=あたえし 与えし



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