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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-01-01

中原中也 「生ひ立ちの歌」


中原中也「山羊の歌」より




生ひ立ちの歌




幼 年 時
私の上に降る雪は
真綿のやうでありました

少 年 時
私の上に降る雪は
みぞれのやうでありました

十七 - 十九
私の上に降る雪は
あられのやうに散りました

二十 - 二十二
私の上に降る雪は
ひょうであるかと思われた

二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました

二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……




私の上に降る雪は
花びらのやうに降ってきます
たきぎの燃える音もして
こおるみ空のくろむ頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のやうでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔でありました


中原中也 1934「山羊の歌」



出典:中原中也全詩集 P.113 1972 角川書店


改訂:2018.09.17 レイアウト更新「山羊の歌」出版年誤記訂正



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