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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2019-01-06

モーツァルト "ラルゲット":Alto Flute


私にとってこの小曲は、最良最高のモーツアルト。
アルト・フルート独奏は ジェームス・ペルライト氏、1962年演奏 LPレコード復刻版。




これは、三、四年前、アルト・フルートの音に魅せられ、あまり多くはないその演奏を探していくつか聴いてみたときに見つけて以来の宝物。

これは、曲も、音も、演奏も、まさに、天上の音楽。

こんなに優しい音楽、こんなにふくよかでぬくもりのある音に包まれていると、たいそう涙腺のゆるい私は、もうアウト…… 筋金入りの人間嫌いの厭世感はどこへやら、ほのぼのと、しんみりとしてしまいます。

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…… いや、厭世感や虚しさが心にあればこそ、天上の音楽はより優しく、よりはかなく、しかし心の奥深く沁み渡るのかも知れません。

「溺れたる夜の海より 空の月、望むが如し」 - 中原中也「失せし希望」より抜粋

そして、ここまで書いてきて初めて気がつきました…… それがきっと、私の涙腺が大変にゆるい、その理由なのかも知れません。

以下蛇足:
上記は今思ったことを安直に書いて、ちょっと言葉が足りていないようなので、追記します。
まず "涙腺が弱い" ですが、ここでは、伝え聞いた悲しい出来事にもらい泣きして流すような涙、それはごく普通の涙もろさであって、ここでは、それは考慮していません。
そうではなく、例えば、あまりにも清らかな月をみて知らずに溢れる涙、新しい表現や高い完成度の作品あるいは演奏のすばらしさを感じた時に流れる涙、そのような、悲しくて流れる涙とは違ったもの、もしかすると、広い意味でのうれし涙に類するものといっていいのかも知れません。
月は、土井晩翠が「荒城の月」に「天上影は替わらねど」と詠ったごとく時代を超えて非情なまでに同じように照る。
しかし、月は、中也の「失せし希望」の引用にあるように、その月が、仮に雲のない夜の満月であっても、いつでも、どこでも、誰にでも、同じに見えるわけではない。
そのように、ある詩や、歌、絵、あるいは演奏、それらに触れたとき、人はどうあれ、その素晴らしさに気づくと、私は涙が滲む、ときに溢れる。ここでは、その頻度の高いことを "涙腺がゆるい" と書いています。

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曲は、アルト・フルートとピアノのための「ラルゲット」。
Theobald Böhm/James Pellerite 編曲
W.A.モーツァルト作曲 クラリネット五重奏曲(クラリネット+弦楽四重奏)K581
全四楽章の第二楽章 ラルゲット より。

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Bravo !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

5'05" (演奏終了後の長い無音部分の手前で停止して埋込)
 "Larghetto" from Clarinet Quintet K581 2nd Mov.
Comp: W.A. Mozart
Arr: Theobald Böhm/James J. Pellerite
Alto Fl: James J. Pellerite
Pf: Dr. Charles H. Webb, Jr.


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-LPレコード ライナーノートより:

  演奏者のジェームス・J・ペルライトはインディアナ大学音楽スクールのフルート教授及びシャトークア交響楽団 (N.Y.) のソロ・フルーティストを務め、ソリストとしてまたオーケストラ団員として広く知られています。
彼はまた、フィラデルフィア管弦楽団、デトロイト交響楽団、インディアナポリス交響楽団、ラジオ・シティ音楽堂交響楽団(New York)、及びパブロ・カザルス監督下のプエルト・リコ・シンフォニカ管弦楽団で、ソロ・フルーティストとして際立った地位を得ていました。
彼は、フィラデルフィア管弦楽団のソロ・フルーティストとして、彼の先生でもある高名なウィリアム・キンケードの後任となりました。

  編曲者のテオバルト・ベーム (Theobald Böhm 1794-1881) は19世紀中葉に現代フルートを発明し、1855年にはアルト・フルートの最初のモデルを完成しました。
彼の著した「フルートとフルート演奏」には数多くの編曲作品が載っていてますが、この「ラルゲット」もその一つです。
この曲が選ばれたのは、その音楽的長所のためばかりではなく、その卓越したリリシズムに依ります。
ベームは、アルト・フルートの可能性と、人間の声に似た良質な音色について述べた説明の中で、この特徴(リリシズム)について度々言及しています。


改訂:2019.01.20 末梢表現加筆



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