いつごろからか、ネット上あるいは印刷物の、パソコン関連の記事や取扱説明書の中で、「遷移」という言葉が、誤用、多用、されていて、なんとも気分が悪いのは私だけではないと思いますが、いかがでしょうか。
最近のパソコン取扱説明書から一例を。
これ、なんとも気持ちが悪いですね。
この例文なら、… に移ります または … に変わります、などが普通の表現だと思います。
それを敢えて …… なぜ? どんなつもりで?
平易な言葉を、熟語に置き換えて、いい文章にしたつもりなのでしょうか?
そうなんでしょうね、わざと悪くするはずはないので。
虎の威を借る狐かな。
これを、単純に間違いだと思うだけでなく、気持ちが悪い…と思うのは、たぶんそこのところ。
いいつもりになって、まちがったことをやってしまう… という、わが身を振り返っての反省をもふくめた、気持ち悪さ、居心地の悪さ。
そして、たとえ間違いであっても、それが印刷されていたり、ネット上で活字体になったりしていると、それを正しいと思い、あるいは、その意味も判らないまま、まねてしまう愚かさ。
そして、それがネット上で、安易にクリックされて、またたくまに、拡散、萬延する怖さ。
当ブログも、私が、知らぬが仏で平然としてはいても、誤字脱字誤謬があちこちで活字体になっているのかと思うと、ちょっと怖くなります。
そこで、たわむれに、誤字を一つ、わざと埋め込んでみました。
どれでしょう…… 見つけるのはかなり難しいかも…… ヒントは、古い字体 (^_-)-☆。
このような、判別が難しく見逃してしまいがちな誤字や、漢字変換ミスなどとは違って、PC の表示画面が「遷移する」と堂々と書かれると、まるで裸の王様を見ているかのような思いがして、あたりを見回す私、黙っていられないこのごろなのです。
∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴
遷移の “遷” の意味、デジタル大辞泉(小学館)にはつぎのように書かれています。
1 元の場所や地位から離れて別の所に移る。移す。「遷都/左遷・孟母三遷」
2 物事が時間とともに移り変わる。「変遷」
3 魂が体から抜け出る。死ぬ。「遷化」
3番目の
遷化というのは知りませんでしたが、他の二つは、日本史で習った “遷都”、いつの間にか覚えた “変遷”、として私が理解しているところと一致しています。
この文字の意味するところは、ある物や事が “相応な時間や距離を経て移り変っていく様” を指していると思います。
したがって、変化する新旧二つの状態の間に、特に時間的空間的経過がなければ、それは “遷” にあらず。
紙芝居のように、一枚めくって即次の絵に変わる… それは、文字通り “変”化。
それを、遷移などといったら、それ自体が漫画でしょう。
* 意図的に埋め込んだ誤字は:萬延 正しくは:蔓延
改訂:2017.09.07 タイトル変更 遷移します→ 遷移する 文末に加筆
2017.09.09 文面構成変更 他
2019.04.22 埋込誤字の解追記