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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2019-07-31

江口章子作詞 "雨" - 雨がふります 雨がふる (2023.10.31 改訂)


雨がふります 雨がふる 遊びに行きたし 傘はなし 紅緒の木履も 緒が切れた…
このちょっとすねたような感じのする歌、他のお子様ランチのような "童謡" とは一味違うその雰囲気…… 好きでした。

改訂版: 江口章子詩集「追分の心」より「雉子」を追記しました。



最近、その "生きざま" がとても気になっている人がいます。
江口章子あやこさん、北原白秋二番目の妻として知られています… 詳細はまだ、私の胸のうちを行ったり来たりしています。ある程度まとまれば改めて書くことにして、ここでは、彼女の詩を一つ。

関連記事:「Alibi-35: 晩秋... Il passe... 詩人... 異邦人... 」



 
" あめ"

あめがふります。あめがふる。
あそびにきたし、かさはなし。
紅緒べにおのお下駄げたが切れた。(初出は お下駄げた, のちに 木履かっこ となる)

あめがふります。あめがふる。
いやでもおうちあそびませう。
千代ちよがみ おりませう、たたみませう。

あめがふります。あめがふる。
けんけん小雉子こきじいまいた、
小雉子こきじさむかろ、さみしかろ。

あめがふります。あめがふる。
人形にんぎやうかせどまだまぬ。
線香せんこう花火はなびもみないた。

あめがふります。あめがふる。
ひるもふるふる。よるもふる。
あめがふります。あめがふる。
 

- 出典:池田小百合編 2006 "読む, 歌う 童謡•唱歌の歌詞" (夢工房)



切れ味の良いのは第三連の "けんけん小雉子が今鳴いた…"、と 最終連の "…昼もふるふる夜もふる…雨がふります 雨がふる" と、 "ふる" を畳みかける結び。
コキジの語感に遊び仲間に対するような親しさが滲みます。そして、子キジも寒かろ、寂しかろと仲間に見立てた子キジを思いやります。
そしてこの、降る、降る、降る、の結びには、まだ遊びに夢中な年頃の子供が、圧倒的な自然現象を前に何かを感じ入っている様子が伺えます。まともに育った成人であれば、人為の及ばぬ自然現象への畏敬の念を感じるとでもいいましょうか。

もし、これを白秋作とするならでき過ぎでしょう。"からたちの花" や "この道" などの歌のつまらなさを思えば……
さらに、これは、どう考えても女の子のうた。そして女性の感性で書かれた詩でしょう、どうしたって。
これは……江口章子あやこさんの作品です。

2023年10月27日追記:
そう断言して終りでは独断と偏見の誹りを免れないので、私がそうとする根拠の一つとして彼女の詩をもう一編引用します。
章子46歳の時に出版された「朝のざんげ」「追分の心」「片葉の蘆」「むらさき」の4章よりなる詩集「追分の心」、その片葉の蘆の章より「雉子」。


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雉子


曇つた朝は
雉子もさみしいか
垣根の木苺の花を
ゆさぶりに來る

雉子が歩るいてゐる
赤いとさかに驚いた
まつ黒い子供ほどの雉子

おそろしい地震の起こりさうな日
雲つて風のない日
雉子はしきりになく。


江口章子 1934 詩集「追分の心」 - 「片葉の蘆」より


出典:「追分の心」豊後高田市立図書館所蔵の初版 (PDF)


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Brava !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

3'54"
"雨"
詩: 江口 章子あやこ
作曲:廣田龍一郎
歌唱:不詳 (シンセサイザー?)

- たとえシンセサイザーによるものであっても、ネット上で
聴けるこの歌の歌唱としてはこれがベストかもしれません.
しかし、遊びにイきたし、と歌うのには馴染めませんが…



改訂:2019.12.12 感想追記
2023.10.25 誤植訂正 子雉子→小雉子
2023.10.27 章子の詩「雉子」追記
2023.10.28 冗長表現削除
2023.10.31 末梢表現変更



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