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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2019-10-05

中原中也「秋の消息」


在りし日の歌より





秋の消息




麻は朝、人のはだえに追ひすが
雀らの、聲も硬うはなりました
煙突の、煙は風に亂れ散り

火山灰掘れば氷のある如く
けざやけき顥気の底に靑空は
冷たく沈み、しみじみと

敎會堂の石段に
日向ぼつこをしてあれば
陽光ひかりめぐる花々や
物蔭に、すずろすだける蟲の

秋の日は、からだに暖か
手や足に、ひえびえとして
此の日頃、廣告氣球は新宿の
空に揚りて漂へり




中原中也 1907-1937「在りし日の歌」より


出典:中原中也全詩集 P.189 1972 角川書店

注)けざやけき=けざやかな:際立っているさま(大辞泉)
注)顥気=こうき:しろい気;天上の白い空
注)すずろ=漫ろ:あてのないさま(大辞泉)
注)すだける=すだけ〔すだく•自動カ行四段•連体•(虫や鳥などが)鳴く〕+る〔り•助動ラ変•連体・…している〕(全文全訳古語辞典)


改訂:旧仮名遣い誤記訂正; 追い→追ひ, 漂えり→漂ヘリ


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