葬送歌
窓硝子に 映つて
過ぎる 斜の人影
かさなり かさなりもつれ 消え
消え‥‥‥
あのとき あのとき
かげのやうに さうして笑つてゐたひと
いつも いつも
歪んだ字を書いて来たひと
死ぬとき うつすら笑つたといふーーー
しかし その声を 私は
人をとほして 聞いたにすぎない
卓の上に 落ちた花のかげ 皿の影
指でふれてみてふれてみても
記憶は一つびとつ消えて行く 消えて行く弱い物音‥‥‥
過ぎる 斜の人影
かさなり かさなりもつれ 消え
消え‥‥‥
あのとき あのとき
かげのやうに さうして笑つてゐたひと
いつも いつも
歪んだ字を書いて来たひと
死ぬとき うつすら笑つたといふーーー
しかし その声を 私は
人をとほして 聞いたにすぎない
卓の上に 落ちた花のかげ 皿の影
指でふれてみてふれてみても
記憶は一つびとつ消えて行く 消えて行く弱い物音‥‥‥
立原道造 1914 -1939 拾遺詩篇より
出典:立原道造詩集 1988 岩波書店
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