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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2024-05-13

立原道造 「葬送歌」


拾遺詩篇より





葬送歌



硝子ガラスに 映つて
過ぎる 斜の人影
かさなり かさなりもつれ 消え
消え‥‥‥

あのとき あのとき
かげのやうに さうして笑つてゐたひと
いつも いつも
歪んだ字を書いて来たひと
死ぬとき うつすら笑つたといふーーー
しかし その声を 私は
人をとほして 聞いたにすぎない

卓の上に 落ちた花のかげ 皿の影
指でふれてみてふれてみても
記憶は一つびとつ消えて行く 消えて行く弱い物音‥‥‥




立原道造 1914 -1939 拾遺詩篇より



出典:立原道造詩集 1988 岩波書店



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