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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2024-05-08

ハインリッヒ・ハイネ「いづこに?」


詩集「遺詩」より





いづこに?




さまよひ疲れし者の
いやはての憩ひのとこはいづこならん?
南の國の椰子の樹影か?
はたラインの岸の菩提樹リンデのもとか?

砂漠の砂に、見知らざる人の手の
われを埋むることもあらんか?
はたまた、とある海岸うみぎしの片ほとりに
つひの眠りを砂にゆだぬることもありや?

とまれ、いづこなりとも神のみそらは
わが憩ひをば取巻かん、
またみそらの星ら奥津城のラムプとなりて
夜ごとわが上に懸りて照らん。




Heinrich Heine ca.1844 Wo? aus Nachlese
ハインリッヒ・ハイネ ca.1844「いづこに?」遺詩より
片山敏彦訳



出典:新譯 ハイネ詩集 片山敏彦 訳 1938 新潮社




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ハイネは、当時まだユダヤ人が差別されていた18世紀末のプロイセン(現ドイツ北部, デンマーク, ポーランド等を含む領域)のユダヤ人家庭に生まれ、20代後半にユダヤ教からキリスト教プロテスタントに改宗し、30代半ばにはカトリックの国フランスのパリに移住しそこで生涯を終えたと言われる。
この詩「いづこに?」にはユダヤ教の戒律主義はもちろんキリスト教の教条主義にも距離を置いた柔軟かつ堅固な神観がうかがわれます。
ライン河畔のデュッセルドルフに生まれ育った彼の望郷の地のみならず、見知らぬ砂漠や海岸の砂、辺境の地に果てる身をも思い、それらを等しく神の庇護の元にあると謳う。

ドグマ(教義/教理)は人の心に宿る信仰に絶対に勝てない。



改訂:2024.05.09 末梢表現変更



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