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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2024-12-21

サルバトーレ・アダモ:雪が降る (歌詞引用改訂版)


このビデオクリップの音声と画像はそれぞれ "雪" を歌いまた映していますが、相互の関連は全くなく、列車の走行音が歌声に被ったりもします。それでも、このクリップで聴くと、なぜか、この歌がひときわ味わい深く聴こえます。

注)本稿は数年前の記事に加筆し歌詞の一部引用を追記したものです。


この歌も蒸気機関車の走る風景もノスタルジーに過ぎないよ、と言われてしまえばそれまでなのですが……
でも、決してそれだけではない魅力がこの歌と画像にはあって、惹きつけられます。

何が素晴らしいかって? 言葉で表しにくいのですが、あえていえば‥‥
この、歌唱とは脈絡なしにアダモのテレビ放映画面を映したり、汽笛がナレーションを遮ったり、画像が縦長に歪んだりもして、決して上質な画像とはいえず、また珍しいわけでもなく、古い記憶の断片を寄せ集めたかのような動画‥‥ それがそんなに "素晴らし" のは、うまく言えそうもないのですが… まず、その一見無造作のような画像が歌が歌われている間中続くこと、それがいい。
丁寧に撮った高画質画像やステレオタイプだったりする画像を歌に重ねられるよりずっといい、何倍もいい。
ポイントは先にも触れた "無造作"。より的確にいえば "無作為"。歌を聴く私とその歌との間に、動画の作者が何らかの操作で余計な介入をしてこない、そういう意味での無造作、無作為。
そのおかげで、私は自分の勝手なノスタルジーにたっぷり浸れるというわけです。
では、そう見えさえすれば画像は何でもいいのか、というとそうではありません。
無造作に見えるのは一見そのようであるだけで、その見せ方にはビデオ作者の優れたセンスをかいま見ることができます。

歌が歌われている間は、一見無造作なようなカットが続きます。
耳は歌声を、目は画面のSLと雪を追い、気がつけば私の心は、在りし日への思いを、あれこれ勝手気ままに馳せている。
歌詞が終わりハミングに変わると画面は遠ざかる列車を映しながらフェードアウト。
画面はここから、一風変わったカットのつながりを見せます。
ファードアウトした画面にエンド・クレジットが現れ、そのままフェードアウトして終わるかと思いきや更にハミングが続き… 突然画面にアダモの超アップの顔が現れる。不安げな眼差しで心ここに在らずという面持ちの表情がハミングに重なる。このあたりのカットのつながりがなんともシュールに感じられて好ましいのです。
やがて顔のアップがフェードアウトすると、突然、走る列車の後部車両が映されすぐに画面右に走り去ってしまう。客車の最後尾がフレームアウトすると、主役のいなくなった背景の雪景色がうつろな静止画のように残る… 小雪が舞い遥かに消えてゆく汽笛…

このラストカットの "雪景色" には唸ってしまいます。
列車が走り去った後の小雪の舞う景色がうつろに見える… そのわけは、喪失感。それは、雪が降り君の来ない夕べの、喪失感。
そして、舞う小雪の他には動きのない雪景色は、消てえゆくハミングと共に、フェードアウトではなく、ホワイトアウトして真白な画面になって動画を終えます。
雪が、静かに、ただ降るばかり…… "blanche solitude (白い孤独)"。

このビデオクリップの作者が、どこまでそのような意図を持って演出したものか、はたまた何か他の理由でそのようなカットの並びになっているのか、持って生まれたセンスで直感的に仕上げたのか……


∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥

外国語に疎い自分の歌曲鑑賞に役立てるため、気に入った歌が外国語によるものであればその歌詞を翻訳することがよくあります。この「雪が降る」もその必要性から訳しました。訳してみるとその内容がとても興味深くまた味わい深いものだと判りますが、当該歌詞は著作権保護期間中のため、残念ながらここに全文を掲載することはできません。しかし、この記事に不可欠な要素であれば、その一部を引用することは許されているので、冒頭の一部のみをここに引用させていただき訳語を併記します。
なお、最近は詩あるいは歌詞として成立する翻訳ではなく、極力、逐語訳とするよう心がけています。できるだけ耳に入ってくる語順で訳語を並べたいためです。とはいえ、例えば "larmes blanches" のように基本的な名詞+形容詞の語順で並ぶものはそれを一語と見做して "白い涙" のように日本語の語順で訳出しています。

原語歌詞 (対訳付加:土のちり)
引用開始:

"Tombe la neige"
   雪が降る

Tombe la neige
降る… 雪

Tu ne viendras pas ce soir
君は来ない… この夕べ

Tombe la neige
降る… 雪

Et mon coeur s'habille de noir
そして ぼくの心は 黒装束

Ce soyeux cortege
それは 絹のようにしなやかな行列…

Tout en larmes blanches
… すべて 白い涙

L'oiseau sur la branche
こづえの 鳥が…

Pleure le sortilege
… 嘆き悲しむ この呪い


Tu ne viendras pas ce soir
君は来ない… この夕べ

Me crie mon désespoir
ぼくにうめく… 絶望が

Mais tombe la neige
それでも 降る… 雪

Impassible manege
薄情な やり口で

 La… la la la…
  Euh euh euh…

:引用終わり


Bravo !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

3'16“
"Tombe la neige"「雪が降る」
Lyrics&Comped by:Joseph Elie De Boeck / Oscar Saintal / Salvatore Adamo
Vocal.: Salvatore Adamo




改訂:2024.12.21 誤記訂正本文加筆抹消表現変更
2024.12.24 抹消表現変更


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