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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の, こだまし, 雲に入り, 野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2015-10-25

J.S. Bach 「主よ、人の望みの喜びよ」


・・・呆然として、すっかり手を止めてしまっている指揮者のアルノンクールが、右手をそっと顔にあて、目じりを拭う・・・

第5曲、ソプラノが最後のフレーズを歌いあげ、独奏バイオリンが美しくも切ないメロディーを奏でているとき、カメラが指揮者に振られると、うつむいて目を閉じ、両手を下げたままの陶酔したようなアルノンクールの姿があった。

クリスティーネ・シェファーの澄んだ歌声と独奏バイオリンが繰り返し奏でる祈りは、まさに天上の音楽であるかと思われ、聞く者の心の奥深くに浄化をもたらす。
演奏中の曲の指揮者といえども、いやだからこそ、心を動かされたのだと、私は思う。

次の第6曲はその旋律が「主よ、人の望みの喜びよ」としてあまりにも有名な曲であるが、この曲を振り終わって、アルノンクールはその手を上げたまましばし動かなかった(あるいは、動けなかった)。
ジョルジュ・プレートルに似て、演奏する曲の曲想と自らの心情とを強く意識して音楽を作り上げていくタイプなのかも知れない。

若いころのアルノンクールは、そのなり振りに才気がほとばしっているような感じがあって、何か、ゆったりと音楽を聞く気分になれないような雰囲気をもたらしていたが、年を経て円熟の境地になって余裕がでてきたように思う。

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埋込ビデオクリップはバッハのカンタータ「心と口と行いと生活で」。

00'00" 第1曲 合唱「心と口と行いと生活で」
05'02" 第2曲 レチタティーヴォ「祝福されし口よ」
06'50" 第3曲 アリア「おお魂よ、恥ずることなかれ」
10'26" 第4曲 レチタティーヴォ「頑ななる心は権力者を盲目にし、
     最高者の腕を王座より突き落とす」
12'08" 第5曲 アリア「イエスよ、道をつくり給え」
16'33" 第6曲 コラール合唱「イエスはわたしのもの」
19'42" 第7曲 アリア「助け給え、イエスよ」
23'23" 第8曲 レチタティーヴォ「全能にして奇跡なる御手は」
25'46" 第9曲 アリア「われは歌わんイエスの御傷」
28'40" 第10曲 コラール合唱「イエスは変わらざるわが喜び」

*前半の終曲第6曲と後半の終局第10曲に奏でられる旋律が「主よ人の望みの喜びよ」として広く親しまれている。

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 32'29"

Cantata BWV 147 "Herz und Mund und Tat und Leben" (1716 & 1723)
Comp: Johann Sebastian Bach (1685-1750)
Soprano: Christine Schäfer
Mezzo-soprano: Bernarda Fink
Tenor: Ian Bostridge
Baritone: Christopher Maltman
Choir: Arnold Schoenberg Choir
Orch: Concentus Musicus Wien
Cond: Nikolaus Harnoncourt
Live from the Kloster Melk, Benedictine Monastery in Austria, 2000


注) アルノンクール氏は、この記事から半年ほど後の 2016年3月5日 に亡くなられました。
安らかな眠りにありますよう、心からお祈り申し上げます。


改訂:2018.01.27 ビデオクリップ埋込 タイトルに曲名・脚注に訃報追記

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